中之島
大阪では今日、天神祭でいちばん華やかなイベント船渡御(ふなとぎょ)が行われます。百隻を超える奉納船が大川を埋めつくし、4000発もの花火が打ち上がるそうです。「水のみやこ大坂」といえ、実感がないほど川も堀も埋め立てられていますが、天神祭はいまでも川の祭りでは世界最大規模だともいわれますから、往事の名残と云えそうです。
その船渡御がスタートするところは中之島の東端、天神橋北詰あたり。
中之島は、天満橋の下流で分かれる堂島川と土佐堀川に挟まれた島です。近代的なビルも多く建つようになりましたが、中之島公会堂や中之島図書館などは大正から昭和初期の風情を保ったままの古くて重厚な景観がすばらしいところです。
水辺に近いこともあって和やかな景観と、重厚な建物の姿は、対照的なのに、こころ安らぐ空間を創り出しています。
この中之島、開発当初の都市計画では、パリのシテ島をモデルにしたと言われています。もう100年程も昔のはなしですけど。シテ島はノートル・ダム寺院。ルーヴル美術館などが建つパリの文化学術拠点です。
偶然ですがそのシテ島を題目に扱った映画『シテール島への船出』がいま関西でも上映されています。ギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスが撮った作品は、彼にとっては『旅芸人の記録』『ユリシーズの瞳』と並ぶ名作とも呼ばれています。この映画、船渡御とは、全く反対で、全編に静寂感を漂わしています。日常の時間とは違う時間を感じたい方なら、観るとほっとできるかも。
場所は、大阪からすこし離れた神戸、神戸アートビレッジセンターです。すこしお薦め。
(宏)