もうパンクさせへん
パンクしないタイヤ
車いすに乗ってる場合で、困ると言えば段差の乗り越え、乗り越えられる高さであれば兎も角、さもなくば別のルートを探さなくてはなりません。
二本足でトコトコと階段を上り下りする動作とは、斯様に便利だったのかと、車椅子利用者になって切実にわかるところです。
とまぁ、段差を乗り越えるにも不自由を感じるところですが、それに匹敵するほどの不便さ、いやそれ以上の不便さといえば、タイヤのパンク。
車いす生活者、また介護の事業者さんなら、道すがらでタイヤのパンクは何度か経験したことがあると思います。
僕も、年に何度かパンクさせてしまします。
ゴミだらけの道やら不整路やらを通るだけならまだしも、事務所内でもパンクしてしまうんですよ。
何が刺さるかといえば、『ホッチキスの針』
そうあのコの字形をして細い針。
うちの誰かが資料をバラしたとき、ごみ箱に捨てきれずに事務所の床に飛ばしてしまったりしたものがタイヤに刺さってしまうのです。
こういうときは針を抜いてしまうと一巻の終わりですから、針が刺さったままの状態でパンク修理に出します。
とまぁ、こんな程度のパンクはむしろチョロいもので、実はもっとえげつないものが刺さるのことされちょくちょくあるのです。
何が刺さるのかといえば、
ポスターを止めていた押しピン。壁からはがれて床に落ちたところを車いすのタイヤが通ると万事休すという結果に。
それと、ネジ、釘。こう言う形状はわかり易いところ。ああいう細長く尖ったモノは、いとも簡単に刺さります。
わが社の駐車場は、アスファルトが全面に敷いているわけでなく一部が土のままなので、そういうところにネジや釘が落ちててタイヤで踏んでしまうことが、ちょくちょく。
こういうのは、まだ理解できる範疇。
ときには、元は何かわからないような樹脂部材の破片とか、何かの金属部品でパンクさせられてしまうこともあるのです。
こういう部材はゴムに刺さるというのではなく、タイヤを裂いてしまうこともあって、そういうときは、あっという間にプシューッと空気が抜けてしまうんですよ。
それが晴れの日ならともかく、雨だったり、雨上がりだったりで地面がぬかるみ状態ならたまったものとちゃいますわ。
車いすで通行する分において、普通の一般道より、うちの会社のほうがよっぽど物騒な状態なのです。
車いすはパンクすると、非常に使いづらい道具になります。
単に進みにくくなるだけではありません。まっすぐに進むことができなくなるし、乗り心地も当然わるくなるし、パンクした車いすを使うには非常に腕力を使います。
そんな車いすの大敵『パンク』をなくしてしまおうと開発されたのが『ノーパンクタイヤ』
パンクしないタイヤのことです。
毎日使う車いすのことパンクしないとなれば、とても優れた特徴なので、グッと普及してもいいところですが、市販の車いすでノーパンクタイヤの採用はごく少数。大抵は普通のタイヤ、空気で膨らんでいるあのタイヤを装着しています。
パンクしないならば、とても優れた機能ですから普及しそうなところですが、そうではない。その理由は、欠点もあるからです。
そのノーパンクタイヤの良い点(○)と悪い点(×)といえば
まず良い点(○)として
- パンクしない。当たり前ですが、この製品のコンセプトですから
- 空気が減らないのでメンテが楽ちん。そもそも空気を入れる構造になっていません。一度タイヤに装着したなら、それで完了。ノーパンクタイヤで大抵の製品は、空気圧で5kg/平方m~4kg/平方mに相当する反発力を有しています。
さて悪い点(×)は
- 乗り心地はイマイチ良くない。普通のタイヤなら地面から伝わる細かい衝撃は、タイヤの空気層で緩和します。ノーパンクタイヤは空気の代わりに固形物が入っているのでクッション性能は劣ってしまうのです。
- タイヤがちょっと重たい。これも普通のタイヤなら中身は気体の空気。中身の重量はゼロも同然なのですが、ノーパンクタイヤの場合は固形物が入っているので、どうしても重量はかさみます。
- 値段が高い。普通のタイヤの価格は1本で2千円するかしないか、一方ノーパンクタイヤとならば1本4千円、5千円。また、交換作業も普通のタイヤよりも手間がかかるので高めになってしまいます。
悪い点が多くなってしまいましたが、パンクしないとか、空気を入れないというのはとても大きなメリット。車いすの使い方をよくよく考えれば採用することも悪くありませんね。
なお、ノーパンクタイヤと呼ぶのは日本だけ、いわゆる和製英語です。
英語では エアレスタイヤ(air less tire)とか、ムースタイヤ(mousse tire)と呼ばれています。