あのころは入社2年目でした

某社で営業部の部長にこの春から就いたお方とお会いする機会に恵まれました。

けっこう大きな組織ですから、もう、ええ歳のおっちゃんです。

笑顔で開く口の奥では金歯が光ってるし、ちょっと頭がさみしくなってるし。お腹もふっくらしてるし。

「初めまして」とご挨拶して、お互いの名刺を交換してお話しをするなか、そのお方がおっしゃるには、僕のことを覚えてるようなのです。
「実は昔、御社の営業担当だったんですわ・・・・」

そのお言葉を聞いて驚きましたよ。どう見たって初めてお会いした方なのに。

この業界で車椅子を使ってるひとなど、その当時、二人としていませんでしたから(しかしその状況は、今に至ってもあまり変わりませんけど)、どうしても僕は覚えられてしまう存在です。相手さんは覚えていても、僕はすっかり忘れてるなんて、実はちょくちょくあることでして。

僕の記憶力といえば、いたって心許ないものですから。

その営業部長さんがうちを担当していたのは、入社2年目、今から25年も前のことだとか。確かに新人の頃は何事も新鮮ですから、記憶に残りやすいものですし、なおさらでしょう。

一方、僕はといえば、名刺のお名前を読み返しも、何度をお貌を見返しても、一所懸命にお声を聴いても、何ひとつ思い出せません。お恥ずかしい話しです。

黒い机のうえに名刺が縦位置で載っています。ただし名刺はモザイクで見られません。

某社の営業部長さんのお名刺

方々へのご挨拶でお忙しいようでしたので、すぐにお別れとなったのですが、
あとで、当社で古株の社員さんにそのひとのこと尋ねたところ、
「う~~ん、わからん」「え、誰?」「あの頃は担当が頻繁に変わったからなぁ」
覚えているひとなど誰ひとり見つかりません。全滅でした。
記憶力が心許ないのは僕個人の事情ではありません。

社風です、きっと。

そう言い訳します。すいません、悪い社風をあらためます。

こんど朝礼では、あやとりでもしましょうか。認知症予防にはあやとりが効果を示すそうですから。

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